IT社員3人組によるリレーブログ

某IT企業に勤める同期3人が、日常で思ったことを記録していきます (twitter: @go_mount_blog)

知らずに刑事罰を受けそうになった話

こんばんは、haseです。

 

先日新しく入ったプロジェクトでの事。

弊社から一部業務を発注しているグループ会社の社員の方にもっとこうして欲しいという指示を出そうとしたところ、上司からすごい勢いで怒られました。

なんぞ?と思って聞いてみると、「請負契約」だから、とのこと。

 

…え、だから何?

 

と、私と同じ感想を持ったあなた。

要注意です。怒られますよ(笑)

 

しかしこのケース、注意しないと実は笑い事では済みません。いわゆる後述の偽装請負となり、最悪の場合、刑事罰に発展する可能性もあるんです。

 

ちょっと指示しようとしただけでなぜそんなことになるのか。

そんなIT業界(だけではないですが)で陥りやすい「派遣」「出向」「請負」に関する勘違い・トラブルについて、今日はまとめていきたいと思います。

 

IT業界の社員事情

 現在、全労働者に占める派遣社員の割合は、2~3%で推移しています。しかしIT業界、というより弊社に限って言うと、体感的には半分は派遣社員の方なのではないかというレベルです。実際私が以前いたプロジェクトのチームでは、5名中3名が派遣社員の方でした。周りのプロジェクトを見回してもほぼ同じような事情のようです。(派遣社員の方は基本的に役職はつかないので、全体でみると割合は下がると思いますが、現場では相当数の派遣社員の方が活躍されています。)

 

ITという業界は、基本的に正社員だけでは回らない場合がほとんどです。システム構築ではプロジェクトベースでの受注が多い関係上、リソースの変動が激しく、派遣社員の方や外部発注に頼るケースがほとんどです。また運用業務についても、業務委託するケースが多く見られます。

IT業界においてはそれだけ派遣や請負というケースに触れる機会が日常的にあることになります。

 

契約形態の違い

上記でも少し触れましたが、正社員以外の方にお仕事を依頼する場合、IT業界では「派遣」「出向」「請負」のケースがほとんどです。

まずは大まかな違いをまとめると、下記表のようになります。

 

契約形態 雇用元 指揮命令関係  就業場所
派遣 派遣会社 派遣先 派遣先
出向 出向元 出向先  出向元と異なる
請負 派遣会社or請負業者 派遣会社or請負業者  雇用元と異なる場合もある

 

派遣・出向

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まずは派遣・出向についてです。

ここから先は発注側=派遣・出向・請負として労働力・成果物の提供を依頼する側、受注側=派遣会社など労働力・成果物を提供する側として話を進めます。

 

上記は派遣契約の図になりますが、発注側として注意すべきポイントは「指揮命令関係があるかどうか」です。

その点において、派遣・出向には大きな違いはありません。雇用元は受注側となり、受注側は発注側に対して「労働力」を提供します。 

 

提供されるのは労働力のため、契約によって業務内容に制限はあるものの、その「労働力」をどう使うかについては、発注側が決めることができます。つまり、業務に関して口出ししても問題はない、というより管理する必要があります。そして残業をさせた場合も、契約に従って残業代が発注側より支払われます。

 

請負

次に請負の場合です。

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 請負の場合にもっとも異なる点は、発注側に指揮命令をする権限がないということです。つまり、請負契約をしている方に対して、私のように指示を出してしまうと違法になります。

 

なぜそうなるのか。

それは、請負において受注側が発注側に提供するものは「成果物」だからです。「労働力」ではありません。

発注側は、提供を依頼した成果物の作成過程について口を出すことはできません。それはあくまで受注側の責任にて行われます。そのため受注側の労働者がいくら残業をしようが、発注側は残業代は出しません。

 

例えば…

makotoロボットというものをhase株式会社(発注側)が作りたいとします。

 

これを派遣で実現しようとした場合、hase株式会社は派遣会社Arisa(受注側)に対して、Satoさんをください!という依頼を行います。基本的にはhase株式会社で一緒にロボットを作り、一緒に頑張った時間だけ対価を支払います。

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一方請負となると、hase株式会社は派遣会社Arisaに対して、ロボットの腕を40,000円で作ってください!という依頼をします。ですので、Satoさんがどれだけ頑張って腕を作ったかにかかわらず、40,000円を支払います。

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偽装請負

ここで、派遣か請負かというのは、契約ではなく実態で判断されます。

つまり、請負契約にもかかわらず発注側が作業指示をしている場合、「偽装請負」として刑事罰の対象となる可能性があります。

 

では、なぜ偽装請負をしてしまうのか。

それは、請負契約としてしまえば残業代を支払う必要がなく、かつ労働災害や業務指導、必要な設備の準備などの請負労働者に対する責任を回避することができるからです。

 

これは現代の奴隷と言っても過言ではなく、IT業界の闇の一部を担っていると言っていいでしょう。

 

最後に

IT業界にはこの偽装請負というものがはびこっているとよく耳にします。

意図して偽装請負をしている場合は早く労働局に見つかることを願うばかりですが、もし私のように意図せずこのケースに該当してしまっている場合は、怒られる前にぜひ契約内容の見直しを。

 

私のような人間が生まれないことを願っております。

ではでは。